腰に着けて歩くだけで、心拍数を最大42.7%、酸素消費量を最大39.2%まで抑えられる——。Hypershellが発表した新ラインナップ「X Series」は、こうした体感数値を公表値として打ち出した外骨格スーツです。AIによるエンドツーエンドのモーション制御「HyperIntuition」を全モデルに搭載し、$999(約15万5千円)から購入できます。Android Authorityが報じています。

3モデル構成と価格——$999から$1,999まで

X Seriesは腰に装着するエクソスケルトン(外骨格スーツ)で、ハイキングや混合地形のトレイル、長時間の立ち仕事までを想定した3モデル展開です。

モデル出力航続距離価格
Hypershell X Pro S800W17.5km$999(約15万5千円)
Hypershell X Max S1,000W30km$1,499(約23万円)
Hypershell X Ultra S1,000W30km(72Whデュアルバッテリー)$1,999(約31万円)

3モデル間で$1,000の価格差を生んでいるのは、モーター出力・バッテリー構成・対応地形の広さ・素材グレードの4点に集約されています。共通仕様としては、3モデルともIP54の防塵防水等級を備え、カーボンファイバーとチタン合金の構造を採用しています。最上位のUltra Sは「SpiralTwill 3000」カーボンファイバーと航空宇宙グレードの3Dプリント製チタン部品を組み合わせており、コンシューマー向け外骨格としては初の構成だと説明されています。Ultra Sには本体外でバッテリーを充電できるチャージングハブが標準で同梱される一方、Pro SとMax Sには付属しません(別売で追加バッテリーを購入することは可能です)。

目玉は「HyperIntuition」——岩場や階段でも違和感の少ない一気通貫AI制御

X Seriesの中核は、エンドツーエンドのモーション制御アルゴリズム「HyperIntuition」です。従来のルールベース・適応型モーション認識は、あらかじめ用意した歩行パターンのライブラリと現在の動きを照合する方式でした。整った舗装路では機能するものの、岩場や急な傾斜など動的な状況での適応性に課題があったとされています。

HyperIntuitionはヒューマノイドロボットや自動運転車の制御に近い学習方式を採用し、生のセンサーデータをそのままモーターのトルクへ直接マッピングします。応答時間は0.31秒で前世代比64%高速化しており、歩幅やペースが変わった瞬間、足元が砂利や階段に切り替わった瞬間にも遅れずに追従します。歩行同期率は多様な地形で97.5%に達するとされ、岩場でも違和感の少ない動きや、階段の上り下りでの息切れの軽減につながると位置づけられています。

第三者試験機関のTÜV Rheinlandとそれを補完するSGSの双方による検証を受けた初のコンシューマー外骨格ラインとされており、公表されている性能数値は以下のとおりです。

  • 応答時間: 0.31秒(前世代比64%高速)
  • 歩行同期率: 多様な地形で97.5%
  • 平均酸素消費量: 最大39.2%低減
  • 平均心拍数: 最大42.7%低減

なお、HyperIntuitionはフラッグシップ専用機能ではなく、Pro S・Max S・Ultra Sの3モデルすべてに同じ制御システムと「AMRモード」が共通搭載されます。モデル差はハードウェアの出力・航続距離・対応地形の広さに集約されています。

モーター刷新と装着性の改良——M-One Ultraと3層ウエストパッド

モーター系も新世代に置き換わりました。Ultra SとMax Sは新型「M-One Ultra」モーターを採用し、ピーク出力1,000W・トルク22 N·m・最大歩行ペース25 km/hに対応します。Pro Sはひとつ下のクラスで、800W・18 N·m・20 km/hという構成です。新モーターはエネルギー変換効率90%、熱損失を前世代比で半減しており、これがパフォーマンス向上の理由のひとつだと挙げられています。

装着面では、3ゾーン硬度設計のウエストパッドと腸骨にフィットする構造を持つソフトパック方式の装着システムへ再設計しました。背面パッドは厚みを増し両サイドを立ち上げ、レッグストラップには肌触りを重視した素材と滑り止めを追加しています。Ultra Sは動作温度範囲が-20°C〜60°Cで、Pro SとMax Sの-10°C〜60°Cより広く、雪上の使用も想定されています。

アシストモードはPro SとMax Sがウォーキング・ランニング・サイクリング・上り下り・階段・砂利・山道など10種類を搭載し、Ultra Sはこれに砂地と雪上の2モードを追加した構成です。

誰のための$999か——立ち仕事と週末ハイカーの分かれ道

Hypershellは、X Seriesの対象として「立ち仕事のプロフェッショナル」と「アウトドア愛好家・日常使い」の2層を挙げています。前者ではカメラマン・配達員・倉庫作業員・山岳ガイド・捜索救助チームなど、機材を担いで長時間動き続ける用途を想定。後者にはハイクをもう少し長く楽しみたい人、復帰トレーニング中の人、立ちっぱなしの日常をこなす人などが含まれます。

選び分けの基準はシンプルです。日常使いやライトなハイクが中心ならPro S、長距離・高出力を求めるならMax S、雪上や砂地など最も広い地形に対応したいならUltra Sという棲み分けになります。X Seriesは2026年5月21日時点で米国・カナダ・中国・オーストラリア・香港特別行政区でHypershellから直接購入可能で、対応市場は順次拡大予定とされています。日本での展開時期や価格は現時点で公表されていません。

エベレスト遠征と50超のSAR組織へ——HyperLIFTで広がる実地展開

製品発売と同時に、捜索救助チームを支援するフィールドテストプログラム「HyperLIFT」も発表されました。疲労軽減や作業安全性の向上、過酷な現場での運用支援を検証する取り組みです。2026年内に50を超えるSAR組織にエクソスケルトンを提供し、フィードバックやケーススタディの蓄積を進める計画で、SAR組織はsar@hypershell.techから直接ユニットをリクエストできる仕組みです。

エベレスト遠征での実戦投入

登山家のAdrianna BrownleeとGelje Sherpaがエベレスト遠征中にHypershell技術を使用しており、外骨格を単なるテック製品ではなく本格的なアウトドアパフォーマンスツールとして位置付ける狙いがうかがえます。さらに将来のファームウェアアップデートでAI Agent機能を追加する計画もあり、当初はインテリジェントコーチとして、ユーザーが自身の動作を理解し、エクソスケルトンの設定を最適化する役割を担うとされています。

CES 2026で相次ぐ参入——コンシューマー外骨格市場の競争環境

外骨格市場では新興プレイヤーが急増しています。2026年1月のCES 2026では、SumbuがExo-S3コンシューマー外骨格ラインを発表しました。同じCESでRoboCTが2.3kgの軽量GoGo Exoskeletonシリーズを発表し、臨床リハビリから日常モビリティへ事業を拡大しました。NAVEEも2026年1月にシリコンバレーで全地形対応ウェアラブル外骨格Exo-Fitを発表し、欧州から米国へ進出しています。

市場規模と地域シェア

指標数値
市場規模(2025年)24.9億ドル
市場規模(2034年予測)642.3億ドル
CAGR(予測期間)43.7%
パワード型シェア(2026年)86.36%
北米シェア(2025年)38.7%

市場は2025年の24.9億ドルから2034年に642.3億ドルへ拡大し、CAGRは43.7%と試算されています。北米が2025年に38.7%のシェアで市場を主導しています。

Q&A

Q. $999のPro Sと$1,999のUltra Sは結局どこで差が出るのですか? HyperIntuitionの制御アルゴリズム自体は3モデル共通です。差はハードウェア面で、Ultra Sはピーク出力1,000W・トルク22 N·m・最大25 km/h、航続距離30km(72Whデュアルバッテリー)、動作温度範囲-20°C〜60°Cで、雪上・砂地を含む12モードに対応します。Pro Sは800W・18 N·m・20 km/h、航続17.5km、対応地形10モード、動作温度-10°C〜60°Cで、素材グレード(Ultra SはSpiralTwill 3000カーボンと3Dプリントチタン)とチャージングハブの同梱有無も差別化点です。

Q. 性能数値の信頼性はどう担保されていますか? X SeriesはTÜV RheinlandとSGSの両機関による検証を受けた初のコンシューマー外骨格ラインだとされており、応答時間0.31秒や心拍数42.7%低減などはこの試験ベースの公表値です。

Q. 日本でも買えますか? 2026年5月21日時点の販売国は米国・カナダ・中国・オーストラリア・香港特別行政区です。日本での展開時期や価格は公表されていません。

出典