なぜ9to5Macは、せっかく用意される便利機能を「あえてオフのまま使う」と宣言しているのでしょうか。Bloombergによれば、新Siriには会話履歴を30日・1年・無期限から選んで自動削除できるオプションが用意される見込みですが、便利なはずの自動削除を、あえて使わない理由があるといいます。仕様はMessagesアプリと揃えられる形で、9to5Macは機能の追加を歓迎しつつも自身は有効化しない方針だとし、その理由をAIチャットボットの学習特性から解説しています。
Geminiを使うのに学習されない──新Siriのプライバシー設計
新Siriは、GoogleのGeminiモデルを内部で活用する設計とされていますが、AppleとGoogleの取り決めにより、Siriの会話データをGeminiの訓練に使うことは許可されていません。さらに処理基盤もGoogleのサーバーではなく、可能な限りデバイス上で動作し、必要に応じてApple自身が運用するPrivate Cloud Computeで実行される形だとAppleは説明しています。
退任を控えるCEOのTim Cook氏は当時、次のようにコメントしています。
「この協業によって、多くの体験を解き放ち、重要な形で革新できると考えています。私たちは引き続きデバイス上およびPrivate Cloud Compute上で実行し、その過程で業界をリードするプライバシー水準を維持します」
つまりユーザーから見れば、Geminiの賢さだけを借りつつ、訓練データ提供と外部サーバー処理の両方をAppleのプライバシー保証下で切り離して使える形となり、これが新Siriのプライバシー設計の核といえます。
30日・1年・無期限──Messagesと揃えた3択の意味
Bloombergの報道によれば、新Siriには会話履歴を一定期間後に自動削除する選択肢が追加されます。仕様はMessagesアプリと同じで、ユーザーは以下から選べる見込みです。
| 設定値 | 動作 |
|---|---|
| 30日 | 30日経過した会話を自動削除 |
| 1年 | 1年経過した会話を自動削除 |
| 無期限 | 自動削除しない(手動削除のみ) |
センシティブな相談や、自分以外のために行った調査などをSiri側に残したくない場合に活用できるオプションとなります。
9to5Macが「自分はオフのまま使う」と判断した理由
機能の存在は歓迎としつつ、9to5Macの著者は自動削除を有効化しない方針だと述べています。理由は、AIチャットボットは過去の会話履歴から文脈を学習し、それが以後のやり取りの質を高めるためです。
著者は現在Claudeを主に使っており、明示的な指示(簡潔に答える、箇条書きを優先する、情報源リンクを必ず付ける、過剰な賛辞を避ける等)と、回答へのフィードバックを通じて好みを学習させてきたといいます。さらに、明示的に教えていない事柄でも、過去の質問やWeb検索の履歴から文脈を組み立て、賢く応答を調整した経験が複数回あったとのことです。こうした文脈を自動削除で消してしまうのは、自身の使い方には合わないと判断しています。
ただし機微な内容については、個別の会話を手動削除する運用は続けるとしており、友人を手伝うために使ったセッションなど「自分の好みとして学習してほしくない文脈」は積極的に消しているそうです。
運用Tips──「1トピック=1新規チャット」が結果的に効率的
記事末尾では、AIチャットボット全般に通じる運用上のコツとして、トピックごとに新しい会話を始めることが推奨されています。1つのチャットに話題を積み上げると、追加メッセージのたびに過去の文脈をすべて処理するためトークン消費が増え、後から参照する際にも見つけにくくなる、という指摘です。Claudeは自動で適切なチャット名を付ける傾向があるため、サイドバーから過去のセッションを再開しやすい点もメリットとして挙げられています。
新Siriが正式に公開された際には、自動削除をオンにするか・どの期間にするかは、自分の使い方が「履歴を活かす」側か「履歴を残さない」側か次第といえます。手動削除は引き続き使える前提なので、9to5Macの著者と同じ「無期限+センシティブな会話は手動削除」という運用が、多くのユーザーにとっての最大公約数的な落としどころとなりそうです。
WWDC 2026で披露──Dynamic Island刷新とベータ提供の可能性
自動削除オプションは、新Siriの全体的なUI刷新パッケージの一部として登場する見込みです。WWDC 2026は6月8日から12日に開催される予定で、この場で新Siriが披露されるとみられています。
注目される具体的なUI変更点
- iOS 27ではDynamic IslandにSiriの新インターフェースが搭載される見込みです
- Siriを起動するとDynamic Islandに「Search or Ask」プロンプトが表示され、グローイングカーソルが伴うとされています
- カメラアプリにも専用Siriモードが追加される予定です
ただし完成度については慎重な見方もあり、新Siriは当初ベータ版として投入される可能性が指摘されています。自動削除設定のような細やかな機能も、こうしたベータ段階を経て段階的に整備されていく形となりそうです。UIの大幅刷新とプライバシー設定の追加が同じタイミングで提供されることで、ユーザー体験の刷新がより印象的に伝わる構成となっています。
年間10億ドル規模──Apple-Google提携の経済的背景
新Siriのプライバシー設計が成立した裏には、巨額の商業契約があります。AppleとGoogleの提携は2026年1月12日に正式発表された複数年契約で、報道によればAppleはGoogleに年間約10億ドルを支払うとされています。選定の過程ではOpenAIやAnthropicも候補に挙がっていましたが、最終的にGoogleが選ばれました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年1月12日 |
| 報道された金額 | 年間約10億ドル規模 |
| 競合候補 | OpenAI・Anthropicもテスト対象 |
| ChatGPT統合 | Siri統合契約は変更されない |
なお、既存のChatGPTによるSiri統合契約については変更されないと報じられており、Geminiの採用と並行してChatGPTとの関係も維持される形となっています。背景には、iPhone 16発売時のSiri広告をめぐる集団訴訟で2億5000万ドルの和解に至った経緯もあり、プライバシーや信頼回復に資する機能を前面に打ち出す必要性が高まっていることがうかがえます。
Q&A
Q. 自動削除はデフォルトで有効になるのですか? 報じられた範囲では「オプション」として提供される仕様で、Messagesアプリと同様にユーザーが30日・1年・無期限から選ぶ形になる見込みです。強制ではありません。
Q. SiriのデータはGoogleのGeminiモデルの学習に使われますか? 使われません。AppleとGoogleの取り決めにより、Siriの会話をGeminiの訓練に使うことは許可されていないと報じられています。処理もGoogleのサーバーではなく、デバイス上またはAppleのPrivate Cloud Computeで実行される設計です。
Q. 新Siriはいつ公開されますか? 具体的な公開時期は明らかにされていません。今回報じられているのは公開時に搭載される予定の機能の一部にとどまり、正式アナウンスについてはまだ伝えられていません。