Appleが、ブラジルのユーザー向けにApp Store以外のアプリマーケットを選択できる新設定を、iOS 26.5に追加したと9to5Macが報じています。注目は手数料の輪郭で、同メディアによればApp Store手数料は最大25%、Apple IAP利用時はさらに+5%、代替ストア経由のアプリには5%の「Core Technology Commission」が課される見込みとされています。日本のユーザーにとっても、EUに続くサイドローディング解禁の事例として、将来的な日本展開の議論や他地域への波及を占ううえで参考になる動きと言えます。
「App Installation」設定の中身——UIは実装済み、選択肢はまだApp Storeのみ
ブラジル人ユーザーのiOS 26.5には、「設定 > Apps」の中に「App Installation」という新項目が表示されるようになったと、Sorcererhat Techが2026年5月15日に伝えました。今月初めにはiHelpBRが、iOS 26.5 RCの段階でサイドローディング対応の下地が整っていることに言及していたと9to5Macは報じています。
現状の表示は次のような状態です。
- 選択肢として表示されるのはApp Storeのみ
- Appleによる説明文では「デフォルトマーケットプレイスは一覧の最上位に配置され、Spotlight・Siri・Safariなどでのレコメンドに用いられる」と記載
- 「複数のマーケットを追加した場合はデフォルトを変更できる」と明記
UIとしては代替ストアの追加・切り替えを想定した設計が確認できる一方、代替配信がいつ有効化されるかについては明らかにされていません。
EUの「Web Distribution」とは異なる——ストア経由のみのマーケット中心モデル
ブラジル向けの実装は「マーケットプレイス経由のみ」を想定している点が特徴的です。9to5Macによると、CADEの合意条件ではAppleに対して「代替ストア経由でのアプリ配布を許容すること」が求められており、新設の「App Installation」メニューの文言もこの方向性と整合する内容になっていると報じられています。
これはEUのDMA対応で導入された「Web Distribution」、つまり認定済みデベロッパーが自社サイトから直接iOSアプリを配布できる仕組みとは異なる方向性です。EUでは「ストア経由」と「自社Web経由」の二系統が並走していますが、ブラジル版は前者のみに寄せた設計になっていると整理できます。
料率の全体像——最大25%、IAP利用で+5%、代替ストアには5%のCTC
9to5Macが伝えた内容によれば、CADEとAppleの合意条件のもとで、Appleは代替決済・代替配信に対して新たな手数料を設定できるとされています。具体的な構造は以下の通りです。
| 項目 | 手数料 |
|---|---|
| App Store手数料 | 25%(特別プログラム対象デベロッパーは10%) |
| Apple IAP(アプリ内課金)利用時の追加分 | +5% |
| App Store内アプリから外部決済への静的テキスト誘導 | 無料 |
| App Store内アプリから外部決済へのアクティブなリンク・ボタン誘導 | 15% |
| 代替ストア経由で配信されるアプリへの「Core Technology Commission」 | 5% |
9to5Macは、これらの数値についてAppleが正式に確認したものではないと報じており、最終的な発表で表現や条件が変わる可能性は残ると伝えています。あくまでCADEとの合意の枠組みのなかで運用される見込みとされる内容として、留意が必要です。
デベロッパーが押さえるべき判断軸と、今後の注目ポイント
iOS 26.5側にUIが用意され始めたことで、ブラジルにおける代替配信の運用開始は近づきつつあると9to5Macは報じています。前段の数値を踏まえると、デベロッパーや読者が注目すべき論点は次のように整理できます。
- 収益設計の判断軸:App Store継続(最大25%+IAPで+5%)と、代替ストア移行(5%のCore Technology Commission+自前の決済・配信コスト)のどちらが有利か、アプリのARPUと運用負荷で評価する余地が生まれます
- どのストアが最初に認定されるか:現時点で具体的な代替ストア名は公表されていません。Epic Games StoreなどEUで先行する事業者の動きが手掛かりになりそうです
- 解禁時期と公式な手数料発表:Appleからの正式アナウンス、CADE側の運用開始日が次の注目イベントとなります
- 他地域への波及:ブラジルがEUに次ぐ事例となるため、日本を含む他市場の規制当局がどう反応するかが、グローバルな今後の方向性を左右します
CADE和解の背景と実装スケジュール——2026年4月までが期限
ブラジルでの代替マーケット解禁は、3年越しの独禁法案件の決着です。本件は2022年12月、Mercado LivreがCADEに対しAppleの支配的地位濫用を申し立てたことに端を発し、2025年12月23日にCADEがAppleの和解合意を承認しました。合意は3年間有効で、105日以内(2026年4月初旬まで)に代替アプリストアと第三者決済処理の許可がAppleに義務付けられています。
- 2022年12月:Mercado LivreがCADEへ申し立て
- 2025年12月23日:CADEが和解合意を承認、3年間有効
- 2026年4月初旬:105日以内の実装期限
- 不履行時:最大R$1.5億(約2700万ドル)の罰金と調査再開の可能性
heise onlineの整理では、EUと日本に続く形でブラジルでも代替アプリマーケットが許可される見通しで、iOS 26.5におけるUI出現はこの4月の期限に向けた準備段階と読み解けます。
EUの2026年1月「単一ビジネスモデル」移行——CTC化との接続点
ブラジルで言及される「5%のCore Technology Commission(CTC)」は、EUで先行する料率改定の流れと地続きの概念です。
EUにおけるCTFからCTCへの転換
Appleは2026年1月1日までにEU全開発者向けの単一ビジネスモデルへ移行し、Core Technology Fee(CTF)からCTCへと課金方式を変えました。CTCはApp Store、Web Distribution、代替マーケットプレイスから配信されるアプリのデジタル商品売上に5%適用されます。EU側の新料金は単独ではなく層構造で、2%の初期獲得料、5〜13%のストアサービス料、5%のCTCという3要素で構成されています。
批判も根強く、Epic Games CEOのTim SweeneyはAppleのDMA対応を「malicious compliance scheme(悪意ある遵守スキーム)」と評しています。ブラジル版が「マーケット中心モデル」に寄せた設計である点を踏まえると、料率の見かけ上の近さに反して制度設計は別物として評価する必要があります。
Q&A
Q. iOS 26.5の代替マーケット設定は、日本でも使えますか? 現時点で確認されている対象はブラジルのユーザーであり、日本を含む他地域での提供については公表されていません。CADEとの合意に基づくブラジル限定の対応として実装が進められていると報じられています。
Q. 設定が表示されている=今すぐ代替ストアを使えるということですか? いいえ。現状では「App Installation」設定の中にApp Storeしか表示されておらず、代替ストアの選択肢は有効化されていません。Appleがいつ実際の配信を解禁するかは明らかになっていません。
Q. 代替ストアが解禁されたら、ブラジルのユーザーは何をすべきですか? 解禁後の具体的な利用手順は公表されていませんが、「設定 > Apps > App Installation」の項目から、追加された代替マーケットを選択する設計になっていると見られます。デフォルトに設定したマーケットはSpotlight・Siri・Safariのレコメンドにも反映されるとAppleの説明文に記載されているため、どのストアを既定にするかが利用体験に影響しそうです。