Androidで快適にPCゲームを動かせるアプリとして評価を得てきた「GameHub」に、コード盗用疑惑が浮上しています。最新バージョンv6.0のリリース直後、複数の開発者が「自分のコードを無断で取り込まれた」と告発しており、争点はVulkanレンダラーやグラフィックスラッパーなど、他プロジェクト由来とみられるコードがGameHubに含まれているかどうかという点にあります。

v6.0直後に浮上した「コード盗用」の告発

GameSirが先日リリースした「GameHub v6.0」は、Android向けPCゲームエミュレータとして大きな改善を含むアップデートでしたが、リリース直後から別の話題に塗り替えられました。発端は、Winlator Ludashi forkを手がける開発者StevenMX氏の指摘です。

StevenMX氏は、GameHub開発チームが自身が手がけたVulkanベースのレンダラーの成果を流用し、独自開発であるかのように装っていると主張しました。これに対しGameSirはDiscord上で、自社の作業は独立して行われたものだと反論し、「アプリをデコンパイルしてみてほしい」と利用者に呼びかけました。

ところが、この呼びかけが裏目に出ます。実際にデコンパイルに挑戦した開発者は、GameHubのコード内に他開発者・他プロジェクトに由来すると見られるコードが含まれていると主張しました。指摘の対象には、前述のVulkanレンダラーに加え、Termux X11、そしてSnapdragon以外のデバイスでの動作改善に用いられるVulkanグラフィックスラッパーなどが含まれています。

leagoo氏が示した具体的な状況証拠

特に踏み込んだ指摘を行ったのが、開発者のleagoo氏です。Android Authorityによれば、同氏は自身のグラフィックスラッパー関連の作業がGameSirにコピーされたと「95.7%確信している」と述べたとされています。

根拠として挙げられているのが、コードの具体的な特徴です。

  • leagoo氏は独自に「特定の6要素からなるpush_constantsテーブル」を使用していた
  • そのうち2要素は最終的に使用していなかった
  • GameHubアプリ内にも、未使用の2要素を含む全く同じテーブルが存在している

未使用の要素までそっくり残っている点は、独立して書かれたコードでは説明が難しい状況証拠だと指摘されています。

オープンソースプロジェクトのコードを自社アプリで利用すること自体は珍しくありませんが、多くのオープンソースライセンスは、改変したコードの公開を利用者に義務付けています。StevenMX氏はGameSirに対し、エミュレータをオープンソース化してコード全体を公開するか、関係する開発者を適切にクレジットするよう求めています。

過去のEggNSをめぐる経緯とSamsung Galaxy向けの不具合

GameSirがコード関連の論争に巻き込まれるのは、今回が初めてではありません。同社の「EggNS」は、AndroidでNintendo Switchのゲームを動作させるエミュレータとして知られていましたが、他のNintendo Switchエミュレータからコードを盗用したと指摘された経緯があります。今回の件は、過去のEggNSをめぐる指摘に続き、再び同種の疑惑が向けられている形です。

また、足元ではv6.0アップデート後にSamsung Galaxyユーザーの一部でゲームが起動できないという報告が相次いでいました。GameSirはこの問題を修正済みと公表しており、Android Authorityによれば、この不具合はSamsungの「One UI 8.5」ソフトウェアと関係していた可能性があるとされています。

Android Authorityは、今回の盗用疑惑についてGameSirの担当者にコメントを求めており、回答が得られ次第記事を更新するとしています。

利用者の判断材料:代替アプリ

AndroidでPCゲームを動かしたいユーザーにとって、GameHubは選択肢のひとつにすぎません。報道では、「GameNative」「GameHub Lite」「Winlator」など複数の代替アプリが挙げられており、PCゲームをAndroidで遊ぶための環境は広がっています。

現時点では疑惑の段階であり、GameSir側の正式な見解も待たれる状況です。続報を見極めつつ、代替アプリも視野に入れておくとよいでしょう。詳細は出典元を参照してください。

コミュニティ製「GameHub Lite」が突きつけたプライバシー問題

盗用疑惑とは別軸で、GameHubには以前からプライバシー面の懸念が指摘されています。GameHub Liteはリバースエンジニアリングされたプロジェクトで、本家GameHubに含まれるトラッカーや過剰な権限を取り除く目的で立ち上げられています。コントローラーブランドであるGameSirが提供する本家アプリへの懸念を和らげる試みとして注目されています。

具体的な数字も公表されています。

  • オリジナルのGameHubには31の侵襲的権限、11,838以上のテレメトリ/分析ファイル、6つの分析SDKが含まれていました
  • 201のコード修正パッチでこれらが除去され、アプリサイズは114MBから51MBへ縮小し、副次的に性能も改善されています

GameSirはコントローラー販売を通じてGameHubを収益化しており、無料で提供されるアプリの裏側にはハードウェアビジネスが控えています。コミュニティ側がリバースエンジニアリングを通じて透明性を高めようとする動きは、無料アプリの収益構造とユーザーが求めるプライバシーの間にあるギャップを浮き彫りにしています。今回の盗用疑惑と並び、GameHubを取り巻く構造的な論点として位置づけられています。

代替アプリ「Winlator」「GameNative」の立ち位置と最新動向

元記事で代替候補として挙げられているWinlatorとGameNativeは、技術的な系譜と方向性に違いがあります。

アプリ開発形態特徴
Winlatorbrunodev85によるオープンソースWineとBox86/Box64を組み合わせてWindowsゲームを実行
GameNativeオープンソースWinlatorをベースにしたユーザーフレンドリーなフロントエンドでSteamライブラリと統合可能

Winlator側では技術的な進化も続いており、最新のv11ではVKD3Dを用いたDirectX 12サポートがテスト段階として追加されています。一方のGameNativeは、Winlatorを土台にしつつSteamライブラリ連携などフロントエンド面での使いやすさを打ち出しており、FPSと安定性の面でGameHubに匹敵、あるいは上回るケースもあると評価されています。プロプライエタリ路線でビジネスを組み立てるGameHubに対し、オープンソース陣営が機能・性能の両面で存在感を高めている構図がうかがえます。利用者にとっては、ライセンスや透明性も含めて選択肢を比較できる環境が整いつつあります。

Q&A

Q. GameHubはまだ使えますか? 現時点でアプリ自体が停止されたという情報はありません。v6.0で報告されていたSamsung Galaxy向けの起動不可問題はGameSirが修正済みとしています。ただし、コード盗用疑惑への正式な見解は出ておらず、GameSirはDiscord上で当初のStevenMX氏の指摘に対し、自社の作業は独立して行われたものだと反論したと報じられています。

Q. 他にAndroidでPCゲームを動かす手段はありますか? 報道ではGameNative、GameHub Lite、Winlatorといった代替アプリが挙げられています。それぞれの詳細は出典元を参照してください。

Q. GameSirは法的責任を問われる可能性はありますか? ソース記事では法的措置への言及はありません。StevenMX氏は、多くのオープンソースライセンスが改変コードの公開を義務付けている点に触れ、エミュレータのオープンソース化または該当開発者の適切なクレジット表記を求めています。

出典