パスポートをスマホに取り込み、財布から物理パスポートを出さずに空港のチェックポイントをワンタップで通過——。Samsungが2026年5月、Samsung Walletアプリにパスポート情報を取り込めるデジタルID機能「Samsung ID with CLEAR」を発表しました。米国内250箇所を超えるTSA(運輸保安庁)チェックポイントで本人確認に利用でき、ロサンゼルスのBMO Stadiumへの入場にも対応します。Samsungも、GoogleとAppleに続く形で主要モバイルウォレットのデジタルID対応に踏み出した格好です。

米国内250チェックポイント超のTSAで使える——財布から物理パスポートを出さずに通過

「Samsung ID with CLEAR」は、ユーザーが米国のパスポートから直接情報を取り込み、Samsung Wallet上にデジタルIDを作成できる機能です。発表によれば、設定後はSamsung Walletアプリを開いてデジタルIDカードを選び、QRコードまたはNFCで提示するだけで本人確認が完了します。チェックポイントでの動作がワンタップに収まる点が、利用者にとっての最大の体感メリットです。

ベースとなっているのは、パスポートを用いて無料で作成できるデジタルID「CLEAR ID」とされ、Samsung版はこの仕組みを土台に構築されているとみられるとBGRは報じています。

米国内のみ対応——海外渡航では物理パスポートが必須

便利な一方で、利用範囲には明確な制限があります(いずれも米国内のサービスとしての提供)。

  • 米国内250箇所超のTSAチェックポイントで利用可能
  • ロサンゼルスのBMO Stadium入場に対応
  • 開始時点ではすべての米国の州が対応しているわけではない(最新の対応州はTSAのリストで確認可能)
  • 米国内旅行および一部スポーツイベントでのみ利用可
  • 海外渡航時は引き続き物理的なIDの提示が必要

つまり「米国内の移動と限定的なイベント入場に使える本人確認手段」であり、パスポートの完全な代替ではない点が重要です。米国外への渡航では従来通り物理的なパスポート提示が求められます。

対応機種はAndroid 9以降——Galaxy S26 Ultraなどが例示

利用するには、以下の条件を満たす必要があります(米国版の仕様)。

項目要件
対応端末Galaxy S26 UltraなどのSamsung製Android端末
OSバージョンAndroid 9以降
アカウント有効なSamsungアカウント
アプリ最新版のSamsung Wallet
書類有効な米国パスポート

報道ではGalaxy S26 Ultraが例示されているものの、要件としてはAndroid 9以降を搭載したSamsung端末で最新のSamsung Walletが動作することが軸となっています。

設定はWalletから5ステップ——Knoxと生体認証で保護

セットアップの流れはシンプルです。

  1. Samsung Walletアプリを開き「Quick Access」タブを表示
  2. プラスマーク(+)をタップ
  3. 「Digital IDs」を選択
  4. 「Samsung ID with CLEAR」を選ぶ
  5. 「Get Card」をタップし、画面の指示に従う

セキュリティ面では、デジタルIDはSamsung Knoxで保護され、Samsung Walletの一部として指紋認証またはPINコードでアクセスをロックする仕組みです。すべてのデータは端末上で暗号化されて保存され、外部に転送する必要がないと説明されています。

日本のGalaxyユーザーは使える?

今回の機能は米国パスポート保有者向けで、TSA(米国内空港)と特定スポーツイベントが対象です。日本国内で同様の運用が始まる予定については現時点で明らかにされていません。GoogleとAppleに続いてSamsungも追随したと位置付けられており、主要モバイルプラットフォームのデジタルID対応は一段と広がった格好です。

米国を頻繁に行き来するSamsungユーザーであれば、最新のSamsung Walletに更新したうえで対応州・対応空港を確認し、設定しておく価値のあるアップデートと言えます。一方、日本国内で本格的な恩恵を受けるには、対応行政・対応シーンの拡大を待つ必要があります。

BMO Stadium連携が示す「空港の外」への広がり——年齢確認やスタジアム入場での活用

Samsung ID with CLEARの広がりは空港にとどまりません。BMO StadiumのCTOであるChristian Lau氏は、来場者が会場内をより速く安全に移動できる点に触れ、2026年にロサンゼルスを訪れる国際的な観客にも対応するマッチデー体験を構築していると述べています。

機能の射程は旅行用途に閉じておらず、複数のユースケースが想定されています。

  • 21歳以上であることの証明など、政府関連ユースケースとしての年齢確認に対応しています
  • 基本となるCLEAR IDで機能を利用でき、CLEAR+へのアップグレードは可能ですが必須ではありません
  • mDLは21の州・地域で導入済みで、Apple Wallet・Google Wallet・Samsung Walletに分散しており、単一ウォレットでの全国カバーは実現していません

「TSAチェックポイント」「スタジアム入場」「年齢確認」と利用シーンが層をなして広がっており、デジタルウォレットを核にした本人確認の生活基盤化が一段と進む構図となっています。Samsung Walletユーザーにとっては、空港の通過手段というよりも、米国内で日常的に使える本人確認手段としての性格が強まっています。

TSA運用の実態——物理ID携行とConfirmIDの$45料金

TSAガイドラインでは追加確認が必要な場合に備えて物理IDの携行が依然として必要とされています(Tom's Guide)。

TSAは全mDL保有者に対し、物理的なREAL IDを併せて携行することを強く推奨しています。デジタルパスポートをスマホに入れたからといって物理IDを家に置いていく運用は想定されていません。

項目内容
ConfirmID開始日2026年2月1日
ConfirmID料金$45(10日間の旅行期間をカバー)
対象REAL ID非対応者
検証手順Digital ID QRコードのスキャンまたは端末タップ後、任意で生体カメラによる顔撮影
個人データ写真と個人データは確認後に削除

REAL ID非対応者でも、2026年2月1日から$45の手数料で10日間の旅行期間をカバーするTSA ConfirmIDが利用できます。チェックポイントではQRコードのスキャンまたはタップに加え、任意で生体カメラによる顔撮影が行われ、写真と個人データは確認後に削除される運用です。スマホひとつで通過できる体感の裏側で、物理ID携行を前提とした多層的な本人確認プロセスが整備されています。

Q&A

Q. Samsung ID with CLEARの利用料金はかかりますか? ベースとなっているCLEAR IDはパスポートで作成できる無料のデジタルIDと説明されていますが、Samsung ID with CLEAR自体の料金体系については公表された情報の範囲では明らかにされていません。提供形態としてはSamsung Walletアプリの機能として組み込まれる形です。

Q. iPhoneのウォレットに入れているパスポートIDと何が違いますか? 公表された情報の範囲では、iPhone版との具体的な機能差については明らかにされていません。Samsung版は、Samsung端末(Android 9以降)かつ最新のSamsung Wallet・有効なSamsungアカウントが前提となる点が前提条件として挙げられています。

Q. 国際線にも使えますか? 使えません。デジタルIDは米国内の国内線および一部スポーツイベント向けで、海外への渡航時は引き続き物理的なパスポートの提示が必要です。

出典