「1,000曲をイヤホン本体に持ち運び、スマホなしで走り出す」——そんな体験を、Samsungは約10年前のワイヤレスイヤホン「Gear IconX」ですでに実現していました。Android PoliceのTom Bedford氏は、2016年7月に登場したこの製品を振り返り、4GBの内蔵ストレージや心拍計を含むワークアウトトラッキングといった機能を「現代のイヤホンにも復活してほしい」と提言しています。AppleのAirPods Pro 3ですら、人気の耳内心拍センサーで把握できる心拍数の表示には一定の制約があるとされており、10年前のスペックが妙に新鮮に映る、というのが同氏の見立てです。

スマホを置いて走れた時代——フィットネス特化イヤホン「Gear IconX」

Gear IconXは、SamsungのGearシリーズの一員としてGear Fitフィットネスバンドや、Gear Sportスマートウォッチと並ぶフィットネス志向の製品として、Bedford氏によれば2016年7月に登場したとされています。同氏によれば、SamsungはAKG、Harman、JBL、Denonといったオーディオブランドを傘下に持ち、オーディオ領域での実績は長い企業だといいます。

当時のニュースリリースには「完全にコード不要のイヤホンデザイン」「電源スイッチがない」「充電ケースがイヤホンのケースを兼ねる」といった、現代では当たり前となった仕様が驚きをもって紹介されていたとのこと。10年という時間の経過を感じさせる一方、いま見ても面白い機能が盛り込まれていた、というのがBedford氏の振り返りです。

① 1,000曲をポケットに——4GB内蔵ストレージが意味したもの

現代のワイヤレスイヤホンの多くは、SpotifyやTidal、Qobuzといったストリーミングサービスを使うためにスマートフォンとペアリングしている必要があります。Bedford氏自身もランニングやサイクリングをする際、スマートフォンを身につけて運動する不便さに触れ、テストしている全てのイヤホンが「音楽再生にスマホを必要とする」と書いています。

Gear IconXは1,000曲・4GB分のストレージを搭載し、Samsungスマホ/PCからUSB経由でケースに音楽ファイルを転送すると、次にイヤホンを装着したときに自動で同期される仕組みでした。

つまり、スマホを家に置いたままでも音楽を持ち出せる——この一点だけで、ランナーやサイクリストにとっての価値は大きいわけです。かつてはイヤホンやスマートウォッチに内蔵ストレージが搭載されるのは一般的でしたが、ストリーミング時代の現在では珍しい存在となっています。Bedford氏が現行モデルで見つけられたのはAudio-TechnicaのATH-SPORT90BT程度で、それも発売から約6年が経過したモデルだといいます。

② AirPods Pro 3でも踏み込めていない、常時心拍計測

Gearシリーズがフィットネス向けに設計されていたため、Gear IconXにはランニングやウォーキングを計測する機能が組み込まれていました。実行中は、所要時間・距離・心拍数・ペース・消費カロリーを定期的に通知し、通知の頻度は距離もしくは時間で選択できたとされています。

GPS(内蔵・スマホ連携いずれも)は搭載されていないため、本格的なランニングウォッチほどのデータは取れない一方、心拍計を備えている点が現代のイヤホンと一線を画していた、とBedford氏は見ています。AppleのAirPods Pro 3は耳内心拍センサーで人気を集めているものの、Bedford氏は心拍数の表示について一定の制約があると指摘しています。スマートフォンを携行せずに運動したい層にとって、Gear IconXの設計思想は今なお有効、というわけです。

ワークアウト特化のイヤホンを作るブランドが多数存在する現在でも、Samsungが10年前に試みたこの仕組みを真似たメーカーがほとんどいないことを「少々驚き」とBedford氏は評しています。

フィット感を高める「ウィング」構造にも言及

Bedford氏はさらに、現代のイヤホンでも時折見かけるものの、もっと普及してほしい機能として、フィット感を高める「ウィング」構造にも触れています。詳細は出典元を参照してください。

10年前の知恵は現代に蘇るか

Gear IconXに搭載されていた内蔵ストレージやワークアウトトラッキングといった機能は、スマートフォンから解き放たれるイヤホン体験の解像度の高い回答として、Bedford氏が現代のモデルに復活してほしいと挙げる代表例でした。

10年前にSamsung自身が示していたこのアプローチが、現代のイヤホン市場で再評価される日は来るのか——同氏の問いかけは、ストリーミング全盛のいまだからこそ重みを持ちます。詳細な議論や同氏の追加の見解については、出典元を参照してください。

AirPods Pro 3の心拍センサーは「PPG×50ワークアウト」へ拡張

耳内心拍計測は、Apple側の実装でも単なる脈拍取得にとどまらない設計へ進化しています。AirPods Pro 3はカスタムのフォトプレチスモグラフィ(PPG)センサーを搭載し、不可視の赤外線を毎秒256回パルスして血流での光吸収を測定しています。加速度計やジャイロスコープ、GPS、そしてiPhone上の新しいオンデバイスAIモデルとセンサーフュージョンを行うことで、最大50種類のワークアウトを起動できる構成となっています。

開発基盤と片耳・Apple Watch併用時の挙動

このトラッキング体験の裏側には、Apple Heart and Movement Studyで集めた5,000万時間超のワークアウトデータを基盤に構築された、新しいモーションファウンデーションモデルが据えられています。

  • 片方の耳を完全に開けておきたい場合でも、片耳のみの装着で心拍計測が機能します
  • Apple Watchと併用している際は、直近5分間で最も精度の高いソースが心拍トラッキングに自動採用されます

スマートフォンを携行しながらの本格的な運動計測という方向では、耳内センサー単体ではなく、複数センサーとAIモデルの統合で精度を担保する設計思想が採られています。

オンボードストレージ型イヤホンが「フォンフリー」需要で再評価される2026年

10年前のGear IconXが先駆けた「スマホを置いて走る」発想は、2026年の市場で改めて存在感を増しています。過去1年でワイヤレスイヤホン一体型のMP3プレーヤーは、ニッチアクセサリーからフォンフリー再生の有力な代替へとシフトし、特にスイマー、ランナー、子ども、集中して聴きたいリスナーの間で評価が高まっています。Amazon UK・AEでも「wireless mp3 player」「earphones with mp3 player built in」といった検索の継続的な増加が観測されています。

2026年の推奨スペックと選び方の目安

項目推奨水準
内蔵ストレージ16GB以上
防水(水泳用途)IPX8
外部ペアリングBluetooth 5.2以上

多くのオンボードストレージ搭載イヤホンは標準的なBluetooth接続とMP3スタンドアロン再生の両モードを併存させており、セッションごとに使い分けられる構成となっています。混雑したレース会場や電波の弱い場所で生じるBluetoothドロップアウトを回避できる点も、フォンフリー再生が支持される動機の一つとされています。

Q&A

Q. Samsung Gear IconXはいつ登場しましたか? Bedford氏によれば2016年7月に紹介されたとされ、Gearフィットネスシリーズの一員として位置づけられていました。記事公開時点(2026年5月)でちょうど約10年を迎える節目の製品です。

Q. Gear IconXの内蔵ストレージはどのくらいでしたか? 4GBで、1,000曲を保存できました。Samsungスマホ/PCからUSB経由でケースに楽曲を転送し、次にイヤホンを装着したときに同期される仕組みでした。

Q. なぜ現代のイヤホンは内蔵ストレージを捨てたのでしょうか? Bedford氏は、SpotifyやTidalなどのストリーミングサービスが主流となり、自分の音楽ファイルを所有する人が相対的に少なくなったため、内蔵ストレージが主要機能ではなくなったのは理解できると述べています。ただし、スマホなしで運動したい一部のユーザーにとっては今も価値があるため、選択肢が残されていてほしい、というのが同氏の立場です。

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