SamsungがGalaxy Watch向けに、AIを活用した健康関連の新機能群を2026年6月8日から順次展開すると発表しました。目玉は、心拍・呼吸・心拍変動・血中酸素・皮膚温度という5つの「夜間バイオシグナル」をAIが統合解釈するVitalsで、通知過多による「アラート疲れ」を避けるため、知らせるべき変化と無視すべき変化をAIが選別する設計が採用されます。Samsungは今回のアップデートを、Galaxy Watchを「能動的で知的な健康パートナー(proactive, intelligent health partner)」へ進化させる取り組みと位置づけており、単に測定するだけでなく、データを物語として読み解けるようにする狙いです。
6月8日から順次展開——最新モデルが先行、Galaxy Watch 8 Classicは後追い
新機能の配信開始は2026年6月8日からで、まず最新世代のGalaxy Watchに展開し、Galaxy Watch 8 Classicなどの旧モデルは後から対応する流れになります。今回のアップデートは単体の新機能ではなく、Samsung HealthとGalaxyプラットフォーム全体でできることを広げる流れの一部に位置づけられています。
また同社は、GLP-1系の薬を使用しているユーザーの筋肉量減少を抑える用途でGalaxy Watchを活用する取り組みについても、別途テストを始めたと伝えられています。
測定から解釈へ——AIが体調を"読み解く"4機能
タイトルが示す通り、新たに追加される主要機能は4つで、いずれも測定値を取るだけでなく、AIが解釈して「いまの体の状態」を伝える方向にチューニングされています。
① Vitals:5つの「夜間バイオシグナル」を統合
Vitalsは少なくとも5つの「overnight bio-signals」を継続的に追跡する機能です。対象となるのは以下の5項目です。
- 心拍数(heart rate)
- 呼吸数(respiratory rate)
- 心拍変動(heart rate variability)
- 血中酸素(blood oxygen)
- 皮膚温度(skin temperature)
これらを各人の安静時ベースラインと比較し、いつもの状態からどれだけ外れているかを示します。通知過多による「アラート疲れ」を避けたい考えで、どのタイミングで通知を出し、どこは無視すべきかをAIが判断する可能性があるとされています(原文は "it sounds like" と推測的なトーン)。
② Daily Cardio Load:心血管負荷の上限を計算
Daily Cardio Loadは、有酸素・心血管系のトレーニングを行うユーザー向けの指標です。蓄積された心血管的な負荷を測定し、1日の最大負荷量とトレーニング容量を算出します。そのうえでAIが最適な目標値と必要な休息時間を提示し、トレーニングによって体が早く疲弊したり過度に負荷がかかったりするのを避けやすくする設計です。
公開されている画像から判断する限りでは、その日のワークアウト状況をグラフで一覧化する機能も搭載される見込みです。
③ Heart Health Score:Vascular Loadを発展させた日次指標
Heart Health Scoreは、既存のVascular Load機能を土台に、心臓の状態を1日単位のスコアにまとめる長期ウェルネス向けの指標です。睡眠・活動量・ストレスレベルに体組成データを組み合わせて算出し、「どの習慣が健康に効いていて、どの習慣が悪影響を与えているか」を1つの数値で把握できるようにします。BGRは、Apple Watchなど他社スマートウォッチも類似のハート系メトリクスを追跡できると指摘しています。
④ Fitness Index:VO2 maxや歩数からピア比較
Fitness Indexは、心拍数、Samsungが「有酸素フィットネスの主要な指標(key measure of aerobic fitness)」と位置づけるVO2 max、日々の歩数などを総合的に分析する新指標です。さらに、他ユーザー(peers)のデータと突き合わせることで、自分の弱点と強みを浮き彫りにし、どこを優先的に鍛えるべきかを提示します。
主要4機能に加え、Antioxidant IndexとAGEs Indexも追加
上記4つの主要機能とは別に、相対的に控えめな扱いとして紹介されている追加指標が、Antioxidant IndexとAGEs Indexの2つです。Antioxidant Indexは体の継続的な栄養摂取の状況を新たにマップ化する指標、AGEs Indexは生活習慣の選択が体にもたらす長期的な影響(プラス・マイナス両面)を把握するための指標と説明されています。
短期の負荷管理(Daily Cardio Load)から、習慣を反映する日次のスコア(Heart Health Score)、さらに長期的な栄養・生活習慣の指標(Antioxidant Index・AGEs Index)まで、時間軸の異なる指標を重ね合わせる構成になっており、「単発のバイタル測定」から「ストーリーとしての健康管理」へとSamsung Healthを寄せていく意図が読み取れます。
すでにGalaxy Watchを使っているユーザーにとっては、最新モデルから順に配信が始まる更新のため、まずは自分のモデルの対応時期を確認しておくことが第一歩です。配信後は、VitalsとDaily Cardio Loadから日々のデータの見え方が大きく変わるはずなので、いつもの安静時データとの差分や、トレーニング負荷のグラフがどう描かれるかを意識して使うと、新機能の価値を早く実感できます。Apple Watchと比較してSamsung独自の強みを評価するうえでも、配信後しばらく使い込んだ印象が判断材料になります。
GLP-1療法の筋肉量減少をGalaxy Watchで追跡——マサチューセッツ総合病院との共同研究
GLP-1関連の取り組みは、マサチューセッツ総合病院(MGH)糖尿病研究センターとの共同研究として2026年5月に具体化されました。対象はGLP-1RA療法を開始する成人100名で、介入群はGalaxy Watch 8の生体電気インピーダンス分析(BIA)で体組成を測定し、活動量の追跡とパーソナライズされた運動ガイドを受け取る設計です。対照群には通常の標準ケアが提供されます。
- 評価指標には体組成解析のゴールドスタンダードであるDXAスキャンを採用
- 介入群と標準ケア群の生理的変化を比較
- 想定される副作用は心血管リスク上昇・基礎代謝の低下・体重リバウンド
ウェアラブルによる日常的な計測と運動指導で、薬剤治療に伴う筋肉量減少を抑え込めるかを臨床的に検証する取り組みとなっており、Galaxy Watchを医療領域へ橋渡しする具体的な臨床アプローチとして位置づけられています。
5つの柱に再編されたSamsung Healthアプリ——ホーム画面にAI Energy Scoreを統合
Samsung Healthアプリは今回のアップデートでレイアウトを刷新し、健康・フィットネスを次の5つの柱に再編して、関連する指標を整理する構成へ移行します。
- Activity
- Mindfulness
- Nutrition
- Sleep
- Vitals
ホーム画面では、毎日のウェルネスTipsとAIが算出するEnergy Scoreに直接アクセスできる設計に変更されます。これにより健康管理における「guesswork(あてずっぽう)」を取り除き、ルーティンの異なる要素がどう連動しているかを一目で理解できるようにする狙いです。Samsung Healthが目指しているのは、Galaxy Watchで計測した健康データとAIベースのインサイトを結びつけ、ユーザーが自身の身体的・精神的状態をより直感的に把握できる体験で、その入り口となるのがホーム画面の再設計です。
Q&A
Q. 新機能はいつから使えますか? 2026年6月8日から順次展開されます。最新世代のGalaxy Watchが先行で、Galaxy Watch 8 Classicなどの旧モデルは後から対応する流れです。
Q. Vitalsで追跡される5つの指標は何ですか? 心拍数、呼吸数、心拍変動、血中酸素、皮膚温度の5項目で、いずれも夜間に測定される「overnight bio-signals」として安静時ベースラインと比較されます。
Q. 主要4機能の他に追加される指標はありますか? Antioxidant IndexとAGEs Indexの2つが、控えめな扱いではあるものの追加されます。前者は栄養摂取の継続的なマップ、後者は生活習慣の長期的影響を見るための指標として位置づけられています。
Q. 既存のSamsung Healthや従来のGalaxy Watch機能と何が変わりますか? Samsungはこれらの新機能を、Galaxy Watchを「能動的で知的な健康パートナー」へ進化させる取り組みと位置づけており、Heart Health ScoreはVascular Loadを土台に発展させた指標、Fitness Indexは既存の運動データをVO2 max・歩数とあわせて分析しピア比較する新指標として追加されます。単発の数値表示から、AIによる解釈とパーソナライズされた洞察を提示する方向にシフトする点が大きな違いです。
出典
- BGR — 4 New Features Coming To Your Samsung Galaxy Watch
- Samsung Mobile Press — Samsung and Massachusetts General Hospital Launch Joint Study To Investigate GLP-1 Treatment Monitoring With Galaxy Watch
- Samsung Global Newsroom — Samsung Introduces Next-Gen Galaxy Watch Features for AI-Powered Everyday Health Companion