3月のApp Store審査停止以来初——AIエージェント型コーディングサービスのReplitが、4か月ぶりにiPhoneアプリを大型アップデートしました。最新のAgent 4のモバイル投入に加え、競合のLovable・Base44・V0からのプロジェクトを無料で取り込めるキャンペーンも同時開始しています。
App Storeとの審査問題が解消、4か月ぶりのアプリ更新
ReplitのCEOであるAmjad Masad氏は今週、X上でAppleとの問題を解決したと発表しました。同社は3月以降、iPhoneアプリの新バージョンをリリースできない状態が続いていたと報じられていました。
「Appleと問題を解決し、4か月ぶりに当社アプリを公開した。協力してくれたすべての顧客とクリエイターに感謝する。長い道のりだったが、我々は決して諦めず、勝ち続ける。アップデートを楽しんでほしい。新しい機能が今後も多数登場する」とMasad氏は投稿しています。
3月時点で問題視されていたのは、AIによって生成されたアプリがiPhone上でプレビューされる仕組みでした。両社の間で具体的に何が変わったのかは明らかにされていません。
Agent 4と並列エージェント、チーム連携機能を投入
今回のアップデートで最も大きな目玉は、Replitが3月に発表していた最新技術「Agent 4」がモバイルアプリにもたらされた点です。Replitによれば、Agent 4はクリエイティブな用途のために設計されているとしています。
加えて、今回のiPhoneアプリ更新では以下の機能が新たに導入されています。
- 並列エージェント(parallel agents): 複数のアイデアに同時並行で取り組めるエージェント機能
- チームコラボレーション: マージフロー(merge flows)を用いたチーム単位での共同作業
- クロスワークスペース表示: 複数のワークスペースをまたいでプロジェクトを閲覧できる機能
たとえば通勤中にスマホで思いついたアイデアをそのままエージェントに投げ、複数案を同時に走らせながらチームの作業ともマージしていく——といったモバイル前提のワークフローが本格的に可能になります。「PCに戻ってから着手」だった作業が、移動中の数分でアプリ化の入り口まで到達するイメージです。
競合からの乗り換えキャンペーンも展開
リリースに合わせて、Replitは他のいわゆる「vibe coding」プラットフォームからの移行を促すプロモーションも開始しました。具体的には、Lovable、Base44、V0からのプロジェクトインポートを無料で受け付け、インポート後にReplit Agentが無料のモバイルアプリをビルドし、数分でApp Storeに公開するところまで行うとしています。期間限定の無料提供です。
競合の存在がそれだけ意識されている裏返しでもあり、AIコーディング領域での顧客獲得競争が激しくなっていることがうかがえます。
WWDC直前の和解、AppleのAIエージェント方針に影響か
今回の件で気になるのは、AppleがAIエージェントを扱うアプリに対してApp Storeのルールをどう整理していくのかという点です。AppleがAIエージェント周辺でApp Storeに大きな変更を計画している可能性も指摘されています。
Appleの年次開発者会議WWDCは6月8日に開幕予定で、エージェント関連の大きな発表が数週間以内にある可能性があるとされています。
ReplitのiPhone・iPad向けアプリはApp Storeで配信中で、4か月ぶりの更新がすでに反映されています。Replitを既に使っているユーザーであれば、Agent 4と並列エージェントを試すために即座にアップデートする価値のある更新です。
Agent 4を支える資金力と技術基盤——Series D 4億ドル調達と業界評価
iPhoneアプリに搭載されたAgent 4は、Replitの急速な事業拡大を背景に開発された主力技術です。Replitは2026年3月に4億ドルを調達し、評価額は6か月で3倍となる90億ドルに達しました。Series DはGeorgianが主導し、Andreessen Horowitz、Coatue、Y Combinator、カタール政府系ファンドQIAなどが参加しています。同社は2026年末までに年間経常収益10億ドル達成を見込んでいるとしています。
技術面の中核——並列タスクとmicro VM
並列エージェントの裏側では、独自の分離環境技術が動いています。
- Agent 4の並列タスクシステムはマージコンフリクトの90%を自動解決する設計です
- micro VMにより、新しいタスクを開始するとクラウド上にプロジェクトの分離コピーが瞬時に生成されます
- 並列タスク実行は本来Pro/Enterprise向けですが、ローンチを記念してCoreユーザーにも期間限定で開放されています
さらにGoogle CloudはReplitを2026年のAI Tooling Partner of the Yearに選出しており、Fortune 500の85%が同プラットフォームを利用しています。
競合プラットフォームの最新動向——LovableもモバイルアプリでReplitを追う
Replitが乗り換えキャンペーンの対象に挙げた3社のうち、特にLovableは独自のモバイル戦略で対抗しています。Lovableは2026年4月下旬にiOS/Androidアプリをローンチし、これはvibe codingカテゴリでは初の試みでした。スマホからプロンプトを投げて反復できるという点でReplitと正面から競合する位置取りです。
3プラットフォームの特徴整理
| サービス | 特徴 | 価格(開始) |
|---|---|---|
| Lovable | 非エンジニア向けにWebサイト・ECサイト・SaaSを自然言語で構築 | $21/月 |
| Base44 | 2025年にWixが買収。認証・DB・サーバー関数などバックエンド志向 | $20/月 |
| V0 | Vercel製。React/Next.js UIコンポーネントをshadcn/uiとTailwind CSSで生成 | $20/月(Premium) |
Base44は2026年2月にApple App StoreとGoogle Playへの直接公開機能、Plan Mode、Gmail連携を追加し、Lovableも同月のアップデートでPlan Modeを導入しています。各社が「計画段階の強化」と「公開先の拡大」で機能を揃えつつあり、Replitの今回のモバイル更新もこの流れの延長線上にあります。
Q&A
Q. 3月にReplitとAppleの間で何が問題になっていたのですか? AIによって生成されたアプリがiPhone上でプレビューされる仕組みが論点だったと報じられています。両社の間で具体的に何が変更され問題が解消されたのかは公表されていません。
Q. 今回のアップデートでiPhone版Replitに何が追加されますか? 最新のAgent 4のサポートに加えて、複数のアイデアを同時に進められる並列エージェント、マージフローによるチーム連携、複数ワークスペースをまたいだプロジェクト閲覧機能が追加されています。
Q. 乗り換えキャンペーンの対象サービスと無料期間はいつまでですか? 対象はLovable、Base44、V0からのプロジェクトインポートで、インポート後にReplit AgentがモバイルアプリをビルドしApp Storeへ公開するところまでが無料です。Replitは「期間限定(for a limited time)」と告知していますが、具体的な終了日は公表されていません。