公表されたのは、たった一語——「Kirin T93 Pro」。コア構成も、クロック周波数も、プロセスノードも、Huaweiは一切明らかにしていません。今月発表されたフラッグシップタブレット「MatePad Pro Max」について、同社は中国で開催されたHarmonyOSカンファレンスでSoC名のみを公表し、システム全体の性能が45%向上したと主張しました。米国制裁の開始から7年、搭載チップの詳細を伏せ続けてきた同社にとって、チップ名を明かすこと自体が珍しい動きです。

公表されたのは「Kirin T93 Pro」、ただし詳細仕様は非公開

Huaweiは、MatePad Pro Maxを駆動するSoCが「Kirin T93 Pro」であると明らかにしました。ただし、名称以外のスペック情報は一切公表されていません。コア構成・クロック周波数・プロセスノードといった通常チップ公表時に開示される情報は、現時点では不明のままです。

同社は米国の輸出規制が始まって以降、自社デバイスに搭載するチップを明かさない姿勢が続いてきました。制裁開始から7年が経過した現在も、その傾向は続いており、名称だけでも公開されたこと自体が一定のニュースバリューを持つ動きとされています。

Mate 80 Pro Max搭載「Kirin 9030 Pro」の派生かとの観測

中国のSNS「Weibo」では、複数のリーカーらがKirin T93 Proの正体について興味深い推測を投稿しています。具体的には、現行フラッグシップ機向けSoCである「Kirin 9030 Pro」からモバイル通信モデム(mobile data chip)を取り除いた派生版ではないか、との見方です。

Kirin 9030 Proは、Huaweiの現行フラッグシップとして以下のモデルに搭載されています。

モデル名カテゴリ
Mate 80 Pro Maxスマートフォン
Mate 80 RS Ultimateスマートフォン
Mate X7フォルダブルスマートフォン

仮にこの推測が正しければ、MatePad Pro Maxはこれら現行フラッグシップに準じる処理能力を持つことになります。一方で、GSMArenaの記事コメント欄には、ある匿名投稿者から「タブレット向けにより高性能なラップトップ級チップが採用されている可能性があり、そうであればKirin 9030 Proよりかなり優れたものになる」との個人的見解も寄せられています。これはあくまで一読者のコメントであり、現時点でいずれの説も確定情報ではありません。

システム性能45%向上を主張——ただし比較対象は不明

HarmonyOSカンファレンスでHuaweiは、MatePad Pro Maxのシステム全体の性能が45%向上したと主張しました。同社はこの向上要因として、以下の複数要素を挙げています。

  • 新SoC(Kirin T93 Pro)の採用
  • 効率的なヒートディシペーション(放熱)システム
  • HarmonyOS 6
  • 充実したHarmonyOSエコシステム

ただし、この「45%向上」が何を基準とした比較なのかは明示されておらず、前世代のMatePadシリーズと比較したものか、別の指標との対比なのかは不明です。エコシステムが性能に与える影響については、GSMArenaも疑問を呈しています。

タブレット用途を検討する読者にとって重要なのは、仮にKirin T93 ProがKirin 9030 Pro系の派生であれば、Mate 80 Pro MaxやMate X7など現行フラッグシップクラスの処理能力をタブレット形状で利用できる可能性があるという点です。とはいえ、現状ではチップ名以外の確定情報がなく、購入判断の根拠としてはベンチマークの登場を待つ必要があります。

何が判明すれば判断材料になるか

現時点ではKirin T93 Proの詳細仕様は明らかにされていません。読者が購入や買い替えを判断するうえでは、次の3点が今後の鍵になります。

  • Kirin T93 Proのコア構成・クロック周波数・プロセスノード等の詳細スペック
  • Geekbench・3DMark等の独立系ベンチマークによる実測値
  • Kirin 9030 Pro搭載モデルとの性能比較データ

これらが公表または検証されるまでは、「45%向上」という同社主張の真価は判断できません。リーカーらの観測(Kirin 9030 Pro派生説)と一読者が示したラップトップ級チップ説のどちらが実態に近いのかも、今後の検証待ちとなります。

ハードウェア仕様の全体像——4.7mm筐体と13.2インチOLEDの設計

チップ周辺以外のハードウェア仕様もグローバル発表で明らかになっています。MatePad Pro Maxはフルメタルユニボディ設計と新しいCloud Falcon Architectureを採用し、最薄部4.7mm・標準版499g、PaperMatte Editionは509gです。TÜV Rheinland Ultra-thin Bending Resistance認証を取得した初のタブレットで、前世代比60%の曲げ耐性を主張しています。

ディスプレイ・サウンド・接続性

  • 13.2インチのフレキシブルOLED PaperMatteディスプレイ、3000×2000解像度、144Hzリフレッシュレート、1600nitsピーク輝度、1440Hz PWM調光
  • 6基のスピーカーは音量67%向上、低音域167%強化
  • Smart Antenna 2.0によりWi-Fi 7とNearLinkに対応
  • 10400mAhバッテリー、66W急速充電、40W有線リバース充電

これらは「Kirin T93 Pro」のスペック非公開とは対照的に、本体仕様は詳細まで開示されており、購入判断の材料として参照できます。

価格・構成・地域展開——グローバル先行、中国版は6月予定

販売面の情報もすでに公開されています。グローバル版は12/256GBと12/512GBの2構成で、価格は£999.99から、Blue/Space Grayの2色展開です。グローバルデビューは2026年5月7日にバンコクで開催された「Now Is Your Spark」イベントで発表されました。

PaperMatte Edition(欧州価格)の構成別早見

構成付属品価格
12GB/512GBFolio Cover€1,399
12GB/256GBSmart Keyboard€1,499
16GB/512GBSmart Keyboard€1,649

上記はPhonebunch掲載のPaperMatte Edition価格です。中国市場についてはリーカーのDigital Chat Stationが続報を出しており、中国版は6月にNova 16シリーズや新スマートウォッチと同時に投入される見込みです。さらに中国版は100W充電器対応も噂されており、最上位構成では20GB RAM+1TBストレージの登場も指摘されています。グローバル先行・中国後追いという展開順序が、価格や構成を比較検討するうえでの前提となります。

Q&A

Q. Kirin T93 Proの詳細スペックは公表されていますか? いいえ、Huaweiが公表したのはチップ名のみで、コア構成・クロック周波数・プロセスノードといった詳細仕様は明らかにされていません。

Q. Kirin 9030 Proとの関係は確定していますか? 確定していません。中国の複数のリーカーらがWeibo上で「モバイル通信モデムを省いたKirin 9030 Proの派生版ではないか」と推測している段階です。また、GSMArena記事コメント欄では、一読者が「ラップトップ級チップの可能性」を指摘しています。

Q. 45%の性能向上は何との比較ですか? 比較対象は公表されていません。Huaweiは新SoC・放熱システム・HarmonyOS 6・エコシステムを向上要因として挙げていますが、基準となる比較対象は明示されていません。

出典