かつてGamers Nexusの270W検証で約5°C弱の差を見せつけたサーマルペーストとパッドの戦いが、いま新たな局面を迎えています。BGRが2026年5月17日付の解説記事で報じたところによれば、専門家の検証ではペーストが依然として冷却面で優位にあるものの、パッドとの差は「これまでになく薄まっている(thinner than ever)」と表現される段階に入っているとのことです。絶対性能ではペーストが依然リードしていますが、パッドはペーストより「わずか数°C高い」程度にとどまっているとされています。

1990年代から続くペーストと、追い上げるパッド

サーマルペーストは1990年代から使われており、一部のフォーラム利用者はIntel 386プロセッサで使い始めたと主張しています。PCパーツとヒートシンクの間の微細な隙間を埋める「灰色のペースト状物質」として、CPUの熱を逃がす役割を長年担ってきました。

一方のサーマルパッドはシリコンやパラフィンワックスを主成分とする厚みのあるシート状の素材で、同様にCPUなどの熱をヒートシンクへ伝えます。両者の違いは扱いやすさにも表れます。ペーストはユーザー自身が塗布する必要があるのに対し、パッドはあらかじめ製品に貼り付けられた状態で出荷されることが多く、AMDやIntelも自社製品にパッドを同梱するようになってきたと報じられています。

BGRによれば、パッドは切ったり形を変えたりでき、変形しても全体を拭き取って塗り直す必要がなく再利用できるという扱いやすさが、初心者ビルダーにとって扱いやすい要因です。デスクトップ向けではHoneywellの「PTM7950」が代表的な存在で、Honeywell自身は「ハイパフォーマンスIT/エンタープライズコンピューティング向け」と位置付けています。大手PC系YouTubeチャンネルのLinus Tech Tipsが独自バリエーションを販売するなど、ゲーミング向けにも推奨が広がっています。

ベンチマーク結果:差はあるが「数°C」レベル

過去の検証では、ペーストがパッドをわずかに上回る結果が一貫して報告されています。

検証元条件ペーストパッド
Gamers Nexus2020年270W時のCPU温度Thermal Grizzly Hydronaut: 28.03°C (82.45°F)IC Diamond Graphite Pad: 32.84°C (91.11°F)
CyberCPU Tech2024年パッド3ブランドの比較いずれも65°C (149°F) 以下を維持

Gamers Nexusの270W検証ではペーストとパッドの間に約4.81°Cの差が出ています。BGRは、長年にわたる複数の検証でも温度が制御不能になることはなかったものの、両材料の性能には明確なギャップが見られたとまとめています。

ペーストが優位を保つ理由として、BGRは「マイクロスコピックな隙間に入り込めるのはペースト形状ならでは」という点を挙げています。パッドは構造上、ペーストが届く微細な凹凸まではカバーしきれないという物理的な制約があります。

$8.99のペースト vs 最大$25のパッド、どちらが得か

価格面ではペーストに分があります。

  • Arctic MX-4(ペースト): 最大でも$8.99(約1,400円)
  • Honeywell PTM7950(パッド): $10〜$25(約1,500〜3,900円)

最大3倍近い価格差をどう評価するかは、用途次第です。BGRによれば、塗布作業を避けたい初心者や、グラフィックスカードのような複雑な形状のハードウェアにはパッドの方が貼りやすいとされており、その「貼るだけで済む」体験には追加コストを払う価値があるという見方ができます。

結局どちらを選ぶべきか

BGRは結論として、サーマルペーストとパッドの選択は最終的にユーザー次第であり、多くの場合は「価格で決まる選択」になると整理しています。絶対的な冷却性能を重視するならペーストに分があり、塗布作業の手間を避けたい層や、グラフィックスカードのような複雑な形状の部品を扱う層にとってはパッドが現実的な選択肢になります。

Q&A

Q. ペーストとパッド、どちらを選べばいいですか? 絶対的な冷却性能を求めるならペースト、塗布の手間を避けたい・GPUのように形状が複雑な部品に貼りたい場合はパッドが現実的です。Gamers Nexusの2020年検証では270W負荷時に約4.81°Cの差でペーストが優位でしたが、CyberCPU Techの2024年検証では3ブランドのパッドがいずれも65°C以下に収まる結果が出ています。

Q. なぜ従来のペースト派ユーザーまでPTM7950に乗り換え始めたのですか? BGRによれば、GPUのような複雑なハードウェアではパッドの方が貼りやすいと感じるユーザーが出てきたことが背景です。HoneywellがハイパフォーマンスIT/エンタープライズ用途として展開している実績にLinus Tech Tipsの独自販売が加わり、ゲーミング層への認知が広がった構図とされています。価格は$10〜$25(約1,500〜3,900円)と、Arctic MX-4の$8.99(約1,400円)より高めですが、作業性と再利用性に対価を払う層が増えているといえます。

出典