XDAのJeff Butts氏が、Bambu Lab P1S Comboに同梱されるマルチフィラメントシステム「AMS(Automatic Material System)」を数週間使い込んだレビューを公開しました。給紙エラーに何度も悩まされながら、それでも「もう無しでは印刷したくない」と結論づけるに至った、相反する評価の理由が綴られています。

プリンター本体は安定、AMSだけがトラブルの温床

Butts氏は、P1S本体について「退屈に感じるほど安定して動く」と評価しています。だからこそ、AMSが起こす不具合がより目立つというのが論旨です。

AMS特有のトラブルとして挙げられているのは以下のような事象です。

  • スプールがうまく送られない給紙エラー
  • リトラクト(フィラメント引き戻し)でのエラー
  • フィラメント経路が突然不安定になるケース
  • スプールがきれいに回らずに引っかかる現象

通常の3Dプリント失敗(定着不良・フィラメント不良・ビルドプレートの汚れ・スライサー設定の問題など)は「お決まりのチェックリスト」で対応できますが、AMSはフィラメントがホットエンドに届く前の段階で新しい失敗ポイントを増やしてしまう、と指摘されています。1層目がうまく出てプリント計画も妥当なのに、AMSがボトルネックになるパターンが特にストレスだといいます。

スプールを選ぶ「相性問題」と維持コスト

AMSの利点は、複数のフィラメントを常時ロードしておけることです。Butts氏は「ストレージを漁ってスプールを入れ替える手間がなくなり、プリンターが次のジョブを待っている状態になる」と評価しました。

一方で、すべてのスプールが平等に扱われるわけではない点が問題として挙げられています。

  • プラスチック製スプールは概ね良好に動作する
  • 段ボール製スプールはエッジ・重量・転がりの良さによって挙動が大きく変わる
  • アダプター、印刷したリング、巻き直し、スロット選びの工夫といった追加作業が発生する

つまりフィラメント選びがPLA・PETG・TPUといった素材判断だけでなく、「物理的なスプール形状」まで考慮する作業になってしまうという指摘です。Butts氏はこれを「便利さの維持税(maintenance tax)」と表現しました。

AMS 2 Proは弱点の一部に対処

記事では後継機の「AMS 2 Pro」にも簡単に触れられています。初代AMSの粗削りな部分、特にフィラメント保管と湿度管理が日常の悩みになっている場合に対処したモデルとして紹介されており、内蔵のアクティブドライ機能・気密性のある保管・給紙速度の向上したモーター・メンテナンス性の改善などにより、「カラーチェンジ用アクセサリーというより、本格的なフィラメント管理システムに近い存在」と表現されています。ただし、AMSのすべての欠点を消し去るわけではないと釘を刺されています。

AMS無しでも十分か?P1Sを選ぶ判断軸

数々の不満を並べた上で、Butts氏が「もう戻れない」と語る理由は、マルチカラー印刷そのものではありません。

  • ブラケットなら黒PLA、目立つパーツなら白PLA、耐久が必要ならPETG、難しいモデルにはサポート材——という具合に「よく使うフィラメントが常時ロードされている」こと
  • 「色を試してみる」「プロトタイプに別素材を使う」といった実験のハードルが下がること
  • スプール入れ替えや材料切り替えの手間が大幅に減ること

Butts氏はAMSについて「カラーアクセサリーというより、フィラメントマネージャーに近いシステムに変える存在」と表現しました。出力物を綺麗にするためではなく、印刷を始める・切り替える・試す・終わらせるまでの摩擦を減らすために不可欠だ、というのが結論です。

一方で、ブラケット・整理用パーツ・治具・補修部品など、強度や寸法精度が重要な実用パーツの多くはシングルカラーで十分対応できる、とも言及されています。シングルカラー中心の用途であれば、AMSの恩恵は限定的だとButts氏も認めています。これからP1S Comboの購入を検討する場合、AMSの「便利さ」と「トラブル要因が増える」という二面性を理解した上で判断するのが妥当でしょう。

AMS 2 ProをP1Sに後付けする際の具体的な要件と価格差

元記事ではAMS 2 Proの方向性のみ紹介されていますが、P1S所有者が実際に導入する際の構成と費用には注意点があります。AMS 2 Pro単体は$359で販売されており、プリンター購入時のコンボパックなら$250で入手できるため、後付けは割高になります。

項目P1Sでの要件
給紙機能のみ6-pinケーブルのみで動作、外部電源アダプター不要
乾燥機能利用時A1/P1/X1シリーズではAMS 2 Pro 1台ごとにスイッチングアダプターが必要
給紙速度永久磁石同期サーボモーターでフィラメント給紙速度が60%向上、100回交換あたり約10分の短縮
耐久性Vickers硬度1200のセラミック製フィラメント入口で耐久性を強化

つまりP1Sユーザーが乾燥機能まで活かしたい場合、本体・アダプター・ケーブル類を別途揃える必要があり、コンボ購入時より総額が膨らみやすい構造になっています。

さらに上位のAMS HTという選択肢——高温乾燥と拡張性

元記事ではAMS 2 Proまでしか言及されていませんが、Bambu Labはより高温乾燥に対応した「AMS HT」も展開しています。AMS HTは最大85℃の高温乾燥に対応し、ナイロン、ポリカーボネート、カーボンファイバー複合材といった先進材料の乾燥に適しているとされ、AMS 2 Proの65℃では届かない領域をカバーします。

P1Sでの拡張上限

  • X1およびP1シリーズプリンターは最大4台のAMS HTを同時接続できる
  • 最大4台のAMS 2 Proと8台のAMS HTを直列接続し、合計24フィラメントまで管理可能
  • 柔軟または脆性のあるフィラメント専用のバイパス出力ポートを搭載

ただし運用面では制約もあります。AMS HTは乾燥のために外部220V電源が必要で、プリンターからの給電には対応していません(電源アダプターは同梱)。また進行中の印刷ジョブに割り当てられたAMSユニットでは乾燥と印刷を同時実行できないが、ジョブに関与していないAMSであれば乾燥は可能です。高機能素材を扱う実用パーツ用途では、AMS 2 ProよりもAMS HTの方が適合する場面があるといえます。

Q&A

Q. AMSのトラブルはどんな種類があるのですか? 給紙エラー・リトラクトエラー・スプールの転がり不良など、プリンター本体には無いトラブルが新たに発生する点が指摘されています。モデルのスライス・ビルドプレート・フィラメントの状態が問題なくても、AMS側で印刷が中断されるケースがある点が厄介だとされています。

Q. AMSが無くてもP1Sで実用的な造形はできますか? はい。ブラケット・整理用パーツ・治具・補修部品など、強度や寸法精度が重要な造形物の多くはシングルカラーで十分とされています。AMSが解決するのは主に「フィラメント切り替えの摩擦」と「マルチカラー対応」です。

Q. AMS 2 Proで改善された点は何ですか? 初代AMSの粗削りな部分、特にフィラメント保管と湿度管理に関する点が挙げられています。アクティブドライ機能・気密性のある保管・給紙速度の向上したモーター・メンテナンス性の改善などにより、よりフィラメント管理システムに近づいたと表現されていますが、AMSのすべての欠点を解消するわけではないとされています。

出典